位相空間論 第1章 位相空間 −開集合、閉集合−

第1節 はじめに

目次


第1節 はじめに

第2節 トポロジー

第3節 トポロジーの例

 第4節 開集合、閉集合


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第1章 第1章 位相空間 −開集合、閉集合−

 
 集合Aを考えてみましょう。



 集合というのは元同士の関係はあまりなく、元の順序を換えても同じ集合です。
 全体としてどのようなものが括弧{ }の中にそろっているかを問題にします。
 しかし元同士に関係がある場合も考えられます。

 例えば、
    の時、次のような図を書いてみます。
 
         
          

         
          

 図1-1は直線上に並んでいて,図1-2は円上に並んでいます。 これらの図は、形は違
いますが似かよった所があります。 両図とも1と2は隣同士、2と3は隣同士、3と4
は隣同士、1と4は結果としてつながっていますが、直接つながっていないということが
分かります。 ところがそれぞれがどのように近いかを全く考慮していません。
このように何か近いもの同士がつながっていることを集合で表現できないかを考えます。
それが位相空間論です。
位相空間論は位相幾何学と密接な関係をもっています。位相幾何学は主に図形を扱い、位
相空間論は、もっと目に見えない抽象的な対象を扱いますが、理論の基本は同じです。

位相幾何学はゴムの幾何学といわれます。
例えば、
  ゴムの円板があったとしましょう。

   
これらの間には何か共通性があります。
近くの2点AB、ずっと遠くにあるC点を考えます。 そうすると伸ばしても
ABは近く、Cは遠いという性質はある程度保たれます。 もちろん伸縮の仕方によって
ACを近くすることもできますが、何となく近くにあるものは近くにあるのではない
かと言うことができます。連結の状況が保たれているわけです。
ゴムを変形しても変わらないような性質は何かを研究するのが位相幾何学です。

 ユークリッド幾何学があります。
      

2つの三角形DEは合同です(重なります)。しかしプラスチック製の定規なら重なり
ますが、もし変形しやすいゴム製なら、伸びてしまって違う形になり重ならなくなります。
ユークリッド幾何学は、変形しないプラスチックの幾何学だということができます。この
定規はいくら動かしても、回転させても、裏返してもよく、そこに何か変わらない性質が
あります。その性質は何かを考えるのがユークリッド幾何学です。
例えば、角度という性質は変わりません。位相幾何学では角度という考えはありません。
伸ばせば角度は変わってしまいます。角度を扱う学問は、角度を定義したり、角度の性質
を導き出したり、SINCOSという関数を定義します。そういった分野はユークリッド
幾何学です。
変換(定規を移動、回転、裏返す)で手心を加えていると、沢山の性質が保存されます。
ところがゴムの幾何学では、より大きな変換を行います。回転,裏返し、引っ張ったりす
ることもできます。非常に自由に変換することができますが、その代わり保たれる性質は
少なくなります。少なくなると有効でなくなるかというとそうではなく,世の中ではもの
すごい変換が起こるものです。車がぶつかりぐしゃぐしゃになったとします。ユークリッ
ド幾何学的にいうと原形を留めていないわけですが、位相幾何学的にはまだ車で、真っ直
ぐでなくなっただけで、多少ぐしゃぐしゃでも構わないわけです。その時にもまだ保たれ
ている性質があると位相幾何学からは言えるわけです。
 宇宙を考えても、ビッグバーンのように大爆発が起こり空間が曲がったり、すごい変換
が起こります。その時でも何か保たれるものがあります。保たれるものがあるということ
はとても大事なことで、それを手がかりにして物理法則で予測することが可能になります
例えば、エネルギー保存の法則があります。エネルギーが保たれる、だから予測ができま
す。粒子がどこに飛んで行くかとか、町の発明家が永久機関をいくら頑張って作ろうとし
てもできないという予測ができます。保存されるものは、未来を知る上で、あるいはいろ
いろな法則を知る上で非常に重要なことです。
ゴムが変形しても変わらないような性質を研究するのが位相幾何学で、我々が目に見えな
いようなもの、無限次元の物体でも同じ考え方で扱えます。そういう一般的な対象物につ
いて研究するのが位相空間論です。