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自然数と超越数

目次

自然数と超越数

濃度

無限個の直積

アレフと連続体仮説

いろいろな集合の濃度

TEST

   数学の世界でまず確実に存在するものは何でしょうか? 現実の世の中なら、「私」などは 間違いなく存在するかもしれません。数学の世界で確実に存在するものは「無」なのです。これは宗教的哲学的な考えに似ているのですが、要するに空集合φ(あるいは {})は存在するのです。空集合を 0 で言いかえると、0 は存在する、ということができます。

 それでは 1 はどうでしょうか? {φ} という、空集合を要素とする集合を考えます。ここで

 φ ≠ {φ}

がいえます。なぜなら左辺は要素をもたない集合ですが、右辺は要素を持つからです。  そこで0以外のものが存在することになりますので、それを 1 とします。すなわち、

 1 = {0}

とします。すると

 1 = 0 ∪ {0} ={0}   ....(1)

がいえます。(1) 式をもうひとつの存在に拡張します。つまり、

 2 = 1 ∪ {1}   ....(2)

となるように 2 を定義します。すると (2) の右辺は、(1) を使って

= 0 ∪ {0} ∪ {0 ∪ {0}} ={0} ∪ {{0}} = {0,{0}} ={0,1}

と書けます。すなわち 2 は2個の要素をもつ集合です。同様に

 3 = 2 ∪ {2} ={0,1,2}   ....(3)

として数 3 を定義します。以後同様にして自然数 n を定義する、と言いたいところですが、論理的には以上の議論を一般化するのはそう簡単ではありません。

 上の3というのは次のような性質をもちます。

 (T)(∀x)(x ∈ 3 imp x ⊆ 3)

 (C)(∀x)(∀y)(x ∈ 3 and y ∈ 3 imp x ∈ y or x=y or y ∈ x)

 3 = {0,1,2} ですので 3 が上の2つの性質(T)と(C)をもつことは次の式から分かります。

(T)について: 0 ⊆ 3, 1 = {0}⊆ {0,1,2}=3, 2={0,1} ⊆ {0,1,2} = 3

(C)について: x ∈ 3 and y ∈ 3 ならば (x=0,1 or 2) かつ (y=0,1 or 2)。合計9通りのx,y の組み合わせがありますが、そのいずれについても(C)の条件が成立します。

 一般に(T)と(C)の2つの性質

(T)(∀x)(x ∈ X imp x ⊆ X)

(C)(∀x)(∀y)(x ∈ X and y ∈ X imp x ∈ y or x=y or y ∈ x)

をもつ集合 X を序数(ordinal number)といいます。 上で見たように、0も1も2も3も序数です。証明はしませんが、X が序数とすると必ず 0 ∈ X がいえます。つまり序数の中で一番小さなものが 0 です。X=0 でない限り 1 ∈ X がいえます。その意味で序数の中で2番目に小さなものが 1 です。その次が 2 そして 3,4,5,... と続きます。

 0,1,2,3,... (これを拡張された自然数、extended natural number と呼ぶことにします。というのは自然数というのは通常1から始まるもの、とするからです。混乱しない場合には拡張された自然数を単に自然数、と言うこともあります)の他にはどんな序数があるでしょうか? 実は拡張された自然数全体 NAT も序数なのです。

 なぜなら、(T)は次のようにしていえます。

    x ∈ NAT とすると x={0,1,2,...,x-1} ですので x ⊆ NAT (={0,1,2,3,.....}) となります。

 また(C)も同様にして言えます。

 すなわち(拡張された)自然数全体の集合がまた数である、という一見奇妙なことが成り立ちます。

 今(1)式を一般化して次のような写像を考えます。

 succ X = X ∪ {X}

これは集合 X についてその「次」の集合を決めるものです。一般に X が序数ならばその次を表す succ X も序数です。

succ NAT = NAT ∪ {NAT}

というのは序数 NAT の次の序数です。これを

  NAT + 1

と書くことができます。

 2つの序数 A と B について

       A ⊆ B または B ⊆ A

であることが証明できます。

 従って序数の全体はset inclusion でwell ordered set になっています。

 2つの序数 A と B について

       A ⊆ B

であるとき、

A ≦ B

と書き、A は B より小さい、あるいは B は A より大きい、といいます。従って

     0 ≦ 1, 1 ≦ 3, 3 ≦ NAT

などがいえます。

 また序数のうちNATより大きいものは通常の有限の数とは異なりますので、超越数(transfinite number)といいます。NAT+1 もまた超越数です。