論理学と自然言語 

目次


第1節 論証を装った文章 − 受身形を使う

第2節 難解な文の危険

第3節 論理的におかしな文章

第4節 矛盾の後ろにあるもの

第5節 前提をうまく利用した言い抜け


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   第3章 正しからざる文 

第3節 論理的におかしな文章

 論理的に一見しておかしな文というのはそう多くは見かけられませんが、次のようなものはそれでしょう。
 「自分が魔女であると告白しない者はまさに魔女である証拠である。勿論告白した者は魔女である」 こういう論理は中世から近代にかけて行われた魔女裁判の判決の中でよく見られたということです。こういう論理で17世紀にいたるまで実に多くの罪も無い人々が殺されました。  人Aが告白する、という命題を A_confess とし、A が魔女であるという命題を A_witches とすると、
 (A_confess imp A_witches) and (not A_confess imp A_witches)  .....(1)
という命題が上の魔女裁判での判決文です。 (1)は
 A_witches
と論理的に同値となります。理由も何も無く「Aは魔女だ」と言っているだけの判決なのです。
 またAを他の人の名に置き換えればみな成立しますので、判事も検事も神父もみな魔女なのです。
 こんなばかな判決は遅れた時代のものかと思いきや、驚くことに21世紀の日本でもそっくりの論理がまかり通っています。いわく、
「罪を認めればすぐ仮釈放にしてやるが、認めなければ1年でも2年でも拘留してやる」。こういうことを検事から言われた人は少なくないようです。
 人間はなかなか歴史から学ばず、また合理的、理性的な思考をするのはむずかしいようです。