第8章 複素積分
§3 複素積分から通常の積分へ
 複素積分はなかなかむずかしい概念です。それは積分の範囲が複素平面内の
曲線ですし、また積分される関数(被積分関数)の値は複素数だからです。
 この節ではそのような複雑な複素積分を、通常の積分、すなわち実数軸上の
実数値関数の積分に帰着させる方法を、詳しく述べることにします。
そのためにまず下図のような曲線(といっても折れ線)Cを考えます。
スタート点は1 (=1+0i),終点はi (=0+1i)とします。
被積分関数は f(z)=z^2+i とします。即ち、
    を求めることです。


    
 ステップ1: まずこの曲線を分割して各々が単純な形になるようにします。
上の例ではP点で分割します。もともと全体が単純な形ならば分割の必要はありません。
積分は第1区分の上での積分と第2区分の上での積分とをそれぞれ別々に求め足し合わせ
ます。
 ステップ2: 上の第1区分の曲線を、パラメータ表示することを考えます。
パラメーター表示というのは、適当な実軸上の区間からこの第1区分上への写像z(t)
与えるということです。例えば、
   z(t) = (1-t)*(1+0i)+t*(1+i)   ...(1)
とするとこの写像は 区間 [0,1] を曲線Cの第1区分へ写すものになっています。
その理由は z(t) がスタート点 1+0i と、図中のP点(第1区分の終点) 1+i
(1-t) : t で内分する点になっているからです。
 ステップ3:  ステップ2のパラメータ表示の式(1)を使って、被積分
関数、および積分の記号 dz、 更に積分範囲を書き換えます。被積分関数は
それにより実数 t の関数になります。
  f(z(t))= f(z) =z^2+i = ((1-t)*(1+0i)+t*(1+i))^2+i
    = (1-t+t+ti)^2+i = (1+ti)(1+ti)+i =1+2ti-t^2+i
    = (1-t^2)+(2t+1)i  ...(2)
即ち被積分関数は(2)式で表せます。
次に(1)式の両辺を t で微分すると、
    dz/dt = -(1+0i)+(1+i)=i
となります。よって dz=idt と書けます。
また積分範囲は t の動く範囲で、区間  [0,1] です。
 以上から第1区分をC1とすれば
    = 
          = i − 
このように2つの通常の積分に帰着しました。
          = i [ -  - [ +
          = -2 + i  ...(3)
が第1区分上の積分です。
 ステップ4:第2区分上でも同様のことをします。(1)式にあたるのは
   z(t) = (1-t)*(1+1i)+t*(0+i)   ...(1')
よって
  dz/dt=-(1+i)+i=-1,
即ち
  dz=-dt  ...(5)
 また(2)式にあたるのは
  f(z(t))= f(z) =z^2+i = ((1-t)*(1+1i)+t*(0+i))^2+i
   = (1-t+i-ti+ti)^2+i = (1-t+i)(1-t+i)+i =(1-t)^2+2i(1-t)-1+i
   = (1-2t+t^2-1)+(2(1-t)+1)i  
   = (t^2-2t)+(-2t+3)i     ...(2')
曲線の第2区分の部分をC2として、
    = 
          = - +i 
          = - [ - -i [ -3
          =  +2 i  ...(3')
 ステップ5:(3)と(3’)を加えると   
    = +
         =-2 + i + +2 i =- + i.
これが最終的な積分値です。

 なお上の例は曲線が線分で構成されている簡単なものでした。曲線がより
複雑な場合も同じようにすればできます。
例1 まず下図のような曲線(半円)Cを考える。
スタート点は1 (=1+0i),終点はi (=−1+0i)とする。
   を求めよ(即ち、被積分関数は f(z)=i/z)。
       
解)この場合分割は必要ない。 パラメータ表示は少し工夫を要する。
前章の指数関数を利用する。
    z(t) =exp(it)
とすればtが 0 から π に変わるときに、点zは曲線C上をスタート点から終点
まで動く。
    dz/dt=i exp(it)
   f(z)=i/z=i/exp(it) =i exp(-it)
よって
   =  = - =- = -[t
       =-π.