第5章 複素関数の微分
§3 正則
  今、複素数を複素数に変換する写像(関数)f(z) を考えます。
このとき
        f(z)=f1(z)+f2(z)i
と変形して考えます。ここにf1(z)f2(z)は値が実数の関数です。
これらは関数f(z)の実部と虚部にあたりますので
        f1(z)=Re f(z), f2(z)=Im f(z)
と書くこともできます。
 また f1(z) を2つの実数(z の実部と虚部)を変数とする関数と考えると
      f1(z) = f1(x,y)
のように書けます。f2(x,y) も同様とします。
 今2変数の関数について次の定義をします。
定義(全微分可能性)
 2変数(実数)の関数 g(x,y) が点(x0,y0) 全微分可能である、とは
      (exist T1)(exist T2)(
    (g(x0+h,y0+k) - g(x0,y0) -T1h-T2k)/(|h|+|k|)=0)
がいえるときである。これはまたシュトルツ(O. Stolz)の意味で微分可能とも
いう。

定理 f(z) が点z0で正則な必要十分条件は
 f1(x,y)f2(x,y)が点z0で全微分可能であって
      =  ,  = -   (1)
を点z0で満たすことである。ここに f,f1,f2 などは上で出たものである。
(1)の2つの式をコーシーリ−マン(Cauchy, Riemann)の微分方程式という。

 証明は省略しますがこの定理の意味を線形変換の場合でみてみましょう。

例1 線形変換の正則性

A= とし、f(z)=zA とすると、

f(x1,x2)=(x1,x2)A=(r11x1+r21x2, r12x1+r22x2)
となりますから、
 f1(x,y)=r11x+r21y, f2(x,y)=r12x+r22y
となります。従って
      = r11,   = r22

      = r21,   = r12
となります。よって(1)式は
     r11=r22, r21=-r12
となります。これは前節(§2)で求めた条件と同じです。
前節ではこれが微分可能性の必要条件、としたのですが
十分条件であることも分かります。またその点で微分可能なだけでなく
近傍でも微分可能な、「正則」の必要十分条件なのです。

例2 多項式
 f(z)=z^2+1=(x1+x2i)^2+1=x1^2+2x1x2i-x2^2+1
  =x1^2-x2^2 +1+2x1x2i

   =2x,   =2x
  =-2y,  =2y
よってコーシーリーマンの微分方程式を満たしているので、
正則である。