第4章 複素関数
§2 メビウスの変換
 まず、 f(z)=1/(z*’) (z0)という変換を考えましょう。
これは形からいっても線形変換ではありません。
 この逆数をとる変換の性質をみていきましょう。

(1) |f(z)|=1/|z|   (z0)
    特に |z|=1 ならば |f(z)|=1
(2) |z|=1 ならば f(z)=z
  理由: f(z)=1*z/((z*’)*z)
          =z/|z|
          =z

(3) |z|>1 なら |f(z)|<1
(4) |z|<1 なら |f(z)|>1
(5) z が実数ならば f(z) も実数
(6) z が虚数ならば f(z) も虚数

 つまり、この変換は円に対する内と外の折り返しになります(下図)。


上の図で円の外の青、赤の図形が円の中の各々青、赤の図形に対応します。
以上の変換を円反転変換と呼んでおきます(一般的な言い方ではありませんが)。

 次に
   f(z)=    
    (ここで a,b,c,dは ad−bc0 を満たす実数)
という変換を考えます。これを
メビウスの変換(Mebius Transformation)
または1次関数といいます。
 c0、a0 を仮定すると、 

       = (−)/(z+d/c
       = A+B/((z+C)*'*')   ここで A=, B=(−)
                        C=d/c
       = S* P*R*C*S)(z)

ここで S はAだけの平行移動(アフィン)、PはBを乗ずる演算(線形)、
Rは円反転変換、Cは共役複素数をとる変換(線形変換)です。すなわち
メビウスの変換はアフィン変換(線形変換を含む)と円反転変換を合成
したものであることがわかります。

 2つのメビウスの変換f1(係数をa1,b1,c1,d1とする)、
f2(係数をa1,b1,c1,d1とする)の合成は

  (f1*f2)(z)=

            =
これを
            =

とおくと、係数A,B,C,Dは行列を使って

     

と書けます。すなわちメビウスの変換同士の合成はまたメビウスの変換で
その係数は行列の積で与えられます。
 メビウスの変換の逆変換(逆写像)もまたメビウスの変換です。
すなわち、
     f’(w)=     (da-(-b)(-c)0)
となります。
 よってメビウスの変換全体は群をつくります。
 メビウスの変換が行列で表せますので,メビウスの変換を
1次変換(linear transformation)」と
いうことがあります。しかし前節の意味での線形変換とは異なります。
メビウスの変換は円を円に写す変換です。