第4章 複素関数
§1 線形変換
 複素数から複素数への写像を考えます。このような写像を
複素関数(complex function)といいます。複素関数には
いろいろなものが考えられますが、次のような条件を満たすものを考えます。

複素数を複素数に変換する写像fで、任意の複素数z1、z2、c1、c2 
について
    f(c1*z1+c2*z2)=c1*f(z1)+c2*f(z2)
を満たすものは、f(z)=c*zの形しかありません(cは複素数)。
 しかし任意の実数r1,r2に対して(z1、z2は複素数)
  f(r1*z1+r2*z2)=r1*f(z1)+r2*f(z2)
を満たすものはもう少し複雑なものがあります。これらを線形変換(linear
transformation)といいます。その形は

     f(z) =    (1)
となります。それは 
  f(z)=f(x+iy)=f(x*1+y*i)
      =x*f(1)+y*f(i)      (2)
となりますが、f(1)=r11+r12i とし、
       f(i)=r21+r22i とすれば
(2)式は丁度(1)式と同じであることが分かるでしょう。
図にすると、


 上の図で1+0i なる点がf(1)へゆき、 0+i なる点が
f(i)へゆくとすると、A点(0.5+0.2i)はA’点へいきます。
原点は原点へいきます。
 f(1)方向を新しいx軸にみたて、f(i)方向を新しいy方向にみたて、
斜めの座標系(斜交座標)を考えてそこで(0.5,0.2)にあたる場所を
考えればそれがA’点なのです。
 特に f(z)=u*z という形は(勿論1次変換であるが)
 z=z1+z2i, u=u1+u2i として
   f(z)=(z1,z2) 
という行列で表せます。これは 積と偏角の関係から、Arg(u)の回転に
なります。特に |u|=1 で、u=cosθ + sinθiとすると
   f(z)=(z1,z2) 

というよく見る回転の式になります。ただし、複素数を横ベクトルでなく
縦ベクトルとみると

   f(z)= 
と書けますので回転の式も

   f(z)= 
となります。

 次に、
  f(z)=z+u
という変換を考えます。これはuだけ平行移動することを表します。
平行移動のとき、p+q=1 なる2つの実数を考えると
 f(p*z1+q*z2)=p*z1+q*z2+u
  =p*(z1+u)+q*(z2+u)
  =p*f(z1)+q*f(z2)
が成り立ちます。
 f(p*z1+q*z2)=p*f(z1)+q*f(z2)
が成り立つような関数をアフィン変換(affine 
transformation)といいます。これは複素平面上の
直線が直線に移るような写像です。線形変換はアフィン変換ですが、
逆はいえません。
  f(z)=zA+u   (Aは行列、zは横ベクトルと考える)
なる形の関数もアフィン変換です。

 線形変換の他の例として、共役複素数をとる変換
    f(z)= z*’
があります。これは勿論線形です。また
   f(z)=(x、y)
と書けるので行列による表示もできます。この変換は実軸に対する
折り返しになります。
 ついでに、虚軸に対する折り返しは
    f(z)=−(z*’)
        =(x、y)
です。これも線形変換です。