第3章 共役複素数
§3 例題
 共役複素数を使うと種々の問題の解答が簡略化されます。

例1 2(|z1| +|z2|)= |z1−z2|+|z1+z2|
 (平行四辺形の定理、parallelogram law)を証明せよ。
答 左辺=2(z1(z1*’)+z2(z2*’))
  右辺=(z1−z2)(z1−z2)*’
       +(z1+z2)(z1+z2)*’
    =(z1−z2)(z1*’−z2*’)
        +(z1+z2)(z1*’+z2*’)
    = z1(z1*’)−z1(z2*’)−z2(z1*’)
                +z2(z2*’)
     +z1(z1*’)+z1(z2*’)+z2(z1*’)
                +z2(z2*’)
左辺と右辺を比べると等しくなることが分かる。

注:例1がなぜ平行四辺形の定理と呼ばれるか、複素平面上で考えてみよう。

例2 |z1|+|z2| |z1−z2|
   (三角不等式 triangular inequality)を証明せよ。
答 まず
  (z1(z2*’)−z1*’z2)  0   (1)
を証明しておく。これは
  |z1(z1*’)−z1*’z2|  0 
がいえるが、この左辺に符号をつけたものは(1)式になる(計算してみよう)。
ここで与式の両辺は負でない実数であることに着目すると、両辺を2乗した式
   (|z1|+|z2|)  |z1−z2|
を証明すればいいことが分かる。この左辺−右辺は
  2|z1||z2|+z1(z2*’)+z1*’z2
となる(これは実数である)。よって
 2|z1||z2| −z1(z2*’)−z1*’z2
を示せばよい。右辺も実数である。もし右辺が負ならこの式は成立する。
もし右辺が負でなければ、この式の両辺を2乗して
 (2|z1||z2|)  (−z1(z2*’)−z1*’z2)
を示せばよい。右辺−左辺を例1のように計算すれば(1)式の左辺になることが
分かる。すなわち最後の不等式は成立し、従って与式が証明された。

注: 例2の式がなぜ三角不等式と呼ばれるかも考えてみましょう。